奨学金は、もう間に合わない。そう思っていた私が「米山奨学生」になって出会った世界

久世宏 / 國立台湾大學 在学中
国立台湾大学奨学金台湾留学
奨学金は、もう間に合わない。そう思っていた私が「米山奨学生」になって出会った世界

台湾留学を考えるとき、避けて通れないのがお金の話です。学費や家賃、毎月の生活費のことを考えると、奨学金をもらえるかどうかは大きな問題だと思います。

ただ、奨学金には締切があります。私の場合、合格が決まって奨学金を調べ始めたときには、主要な奨学金の募集はほとんど終わっていました。

私は大学院への出願がそもそも遅く、後期日程にあたる募集で台湾大学に合格しました。合格自体は本当に嬉しかったのですが、そこから奨学金を調べ始めて、焦りました。調べても調べても、もう応募できるものが出てこないのです。

それでも探しているうちに、ひとつだけ間に合う奨学金が見つかりました。それが米山奨学金です。私は今も、この奨学金のお世話になっています。

今回は、私が米山奨学生になるまでの話と、奨学生になってから知ったロータリーの世界について書いてみようと思います。

応募できる奨学金が、もう残っていなかった

まず、当時の私の状況からお話しします。

後期日程で合格した時点で、日本の機関がやっている奨学金は、どれも申し込みが終わっていました。大学の奨学金ももらえませんでした。さらに私は中国語の資格をHSKで受験していたこともあり、台湾政府の外交部や教育部の奨学金も対象外でした。

要するに、有名どころの選択肢が全部だめだったのです。正直、「奨学金はもう無理なんだな」と一度は諦めかけました。

それでも粘って調べているうちに、まだ申し込める奨学金がひとつだけあることに気づきました。それが、ロータリークラブに関係する米山奨学金でした。当時の私は、ロータリークラブについては名前を聞いたことがある程度で、どんな団体なのか、何をしているのかもまったく知りませんでした。ただ、応募できるチャンスが残っているなら出さない理由はありません。書類を準備して応募しました。

書類審査を通ると、次は面接です。時期は、大学院の入学式の前でした。会場に入って驚いたのは面接官の人数で、6人ほどの、いかにも荘厳な雰囲気の方々がずらりと並んでいました。面接はすべて中国語だったのですが、面接で何を話したかよりも、あの光景のほうをよく覚えています。

そして後日、合格の連絡が来ました。こうして私は米山奨学生になりました。

これから台湾留学をする人に伝えたいのは、奨学金は出願のタイミングや受験方法によって、応募できるものが大きく変わるということです。合格してから調べるのではなく、出願の段階で締切と条件を一度確認しておくことをおすすめします。

そもそも、ロータリークラブとは?

例会の話をする前に、ロータリークラブそのものについて少し書いておきます。私自身、奨学生になるまでまったく知らなかったからです。

ロータリークラブは、1905年にアメリカで生まれた世界的な社会奉仕の団体です。地域ごとにクラブがあり、そこにはさまざまな業種の経営者や専門職の人たちが集まっています。定期的に「例会」と呼ばれる集まりを開いて、食事をしながら交流したり、講演を聞いたりします。

活動の軸にあるのは「奉仕」の精神です。地域の清掃や献血といった身近な活動から、世界規模でのポリオ(小児まひ)撲滅運動のような国際的な取り組みまで、「超我の奉仕(Service Above Self)」を合言葉に、社会のための活動を続けています。

日本にも古くからロータリーがあります。その日本のロータリーが運営している奨学事業が「ロータリー米山記念奨学会」で、こちらは日本で学ぶ外国人留学生を支援しています。

一方、私が受けている台湾米山奨学金は、この日本の米山奨学会とは別の組織が運営しています。かつて米山奨学生として日本で学んだ台湾の方々が、今度は自分たちが台湾で学ぶ日本人を支援しようと、母国で立ち上げたものです。日本と台湾の絆を深める人材を育てたいという思いで設立された、いわば姉妹制度のような奨学金です。

お世話クラブと、月に一度の例会

米山奨学生になると、「お世話クラブ」というものがつきます。奨学生を受け入れてくれるロータリークラブのことで、奨学生は毎月1回、そのクラブの例会に出席することになっています。

例会と聞くと堅苦しい会議を想像するかもしれませんが、実際は違います。基本はみんなでご飯を食べながら交流する場で、そのあとに簡単な講演のようなプログラムがあることもあります。

私のお世話クラブの例会は、日系ホテルのレストランで開かれています。食事には刺身や天ぷらといった和食が並びます。台湾では和食は高いので、正直、これが月に一度の楽しみでもあります。

出席するのはお世話クラブの例会だけではなく、米山側の例会やイベントにも顔を出します。地域奉仕のイベントもあって、献血の手伝いをしたり、最近だと日本人学校の夏祭りで屋台を開いたこともありました。

クラブの皆さんは本当に優しくて、ロータリーのことを何も知らなかった私には、すべてが新しい体験でした。こんな世界があるのかと感動したのを今でも覚えています。

例会以外でも、ロータリアンの方と仲良くなって、個人的にご飯に行くことも多々あります。そこからインターンに来ないかと言われたり、就職してほしいと言われることもあります。普通だったら行けないような場所に連れて行ってもらえたりすることもありました。学生をしているだけでは絶対に入れなかった世界に、月に数度顔を出す。そんな生活を今も続けています。

大学や政府の奨学金では得られなかったもの

私のお世話クラブには、誰もが名前を知っているような日本企業の台湾法人で、社長や代表を務めている方が多く在籍しています。

大学の奨学金や政府の奨学金をもらっていたら、こういう方々と知り合うことはまずなかったと思います。日本にいたら出会えなかったような日本企業や台湾企業の上層部の方々と、月に一度、同じテーブルでご飯を食べながら話をする。これは他の奨学金ではまず経験できないことだと思います。

実際、米山の先輩の中には、ロータリークラブの人脈からインターンを獲得して、そのまま就職した人も少なくありません。

人脈だけではありません。ロータリーの活動を通じて、社会奉仕という考え方に触れられたことも、自分にとっては大きな学びでした。お金のために探し始めた奨学金でしたが、人生の選択肢が広がりましたし、普通の学生生活では絶対にできない経験を数多くさせてもらっています。個人的には、米山奨学金をもらって本当に良かったと思っています。

米山奨学金は、こんな人に合っていると思う

最後に、どんな人に米山奨学金が向いているか、私なりの感覚を書いておきます。

一番おすすめしたいのは、奨学金をお金だけのものと考えていない人、人との関わりを大切にしたい人です。毎月の例会やイベントへの出席は必須なので、それを面倒だと感じる人には正直向いていません。逆に、普段出会えない人たちと話せる機会だと思える人には、これほど面白い奨学金はないと思います。学生のうちに社会人の世界に触れてみたい人には、特におすすめです。

次に、私のように出願が遅くなって、主要な奨学金に間に合わなかった人です。諦める前に、ぜひ一度調べてみてほしいです。

なお、募集の条件や金額などは年度によって変わる可能性があるので、応募する前に必ず最新の募集要項を確認してください。

奨学金の情報は、探さないと出てきません。私も一度は「もう間に合わない」と諦めかけましたが、探し続けたおかげで、お金だけでなく、思ってもいなかった出会いや経験までもらえています。もし今、同じように奨学金を諦めかけている人がいたら、もう少しだけ探してみてほしいと思います。

台湾留学のお金のことは、出願の時期や受験の仕方によって、使える選択肢が一人ひとり変わります。自分の場合はどうなのか気になったら、気軽に相談してください。

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